土間に集う。野坂の麓の小さな平屋。

山登りの大好きな女性が、野坂山の麓に建てた家。

そんな話をお聞きしていたこともあって、思い描くのは『大草原の小さな家』や『アルプスの少女ハイジ』のような素朴な山小屋。

ワクワクしながら迎えたインタビュー当日。現地を訪れると、そこには白っぽい外壁に青い屋根の、かわいらしい平屋がありました。

-今はご家族3人でお住まいですが、もともとは“ひとり暮らしの家”というご計画だったんですよね。

お施主様:そうなんです。予定外。

-ひとり暮らし用の戸建てって、ちょっとめずらしいですよね。この話がきたとき、谷川さんはどう思われましたか?

谷川:「なるべく小さく」というのが前提としてあったので、どれだけコンパクトにまとめられるかというのが課題でした。それでいて、「山遊びがしっかりできる」というコンセプトに沿っていなければならない。

最小限の面積で、住むために必要な部分と趣味嗜好の部分を折り合いつけていくというのは、初めての試みでしたね。

-この山小屋風のデザインは、谷川さんの提案ですか?それとも、お施主様のご希望で?

(「あれ?どうだったけ?」と言いながら、顔を見合わせる二人)

谷川:もう4年くらい経つので曖昧ですが、山の麓ですし、こういう佇まいの方が景観に馴染むかな、というのはあったと思います。

-山小屋風の簡素な建物だけど、なんとなく可愛いんですよね。屋根はターコイズブルー?

お施主様:最初は、普通の茶色っぽい屋根でしたね。

谷川:そう。そしたら、「ちょっと変わった色がいい、青がいいな」ってご提案いただいて。

-いいですよね。この青い屋根が、すごく印象的。玄関灯も可愛いですよね、ステンドグラスの。

谷川:これも、施主様のチョイスです。私ひとりだと、無骨なデザインになりがちなんで。こういう可愛いチョイスが入って、ちょうどいい感じになりましたね。

一方、家の中は白×木目のナチュラルな雰囲気のなかに、粗削りな男っぽさが見え隠れ。

モルタル仕上げの土間やOSB合板を使った壁は、コスパがよいだけでなく、汚れが目立ちにくくお手入れしやすいという利点もあるのだとか。

実際、フックをつけたOSB合板の壁には、登山リュックや山道具がびっしり。4畳分の広い土間には、自転車や釣り道具も置かれています。

お施主様:そっちは夫のスペースなんですよ(笑)

谷川:ご主人も多趣味なんですよね。こういう土間っていうのは、無理に用途を決めなくていいと思うんです。家族構成とかライフスタイルの変化に合わせて、いろんな使い方が自然と出てくると思います。

お施主様:ベビーカーをそのまま置けるの、すごい便利です。

-畳まなくても十分入る広さですもんね。あと、この玄関の引き戸も素敵ですね。外から見るとアルミなのに、家の中から見ると木目。一瞬「ん?」と思っちゃいました。

谷川:半樹脂サッシになるのですが、外側は外観イメージに合わせてアルミで、室内側はインテリアに合う木目柄になっています。

「ちびまる子ちゃんのオープニングっぽい感じ!」ってリクエストを頂いて、「これか?これなんか?」ってテレビにかじりついてチェックしました(笑)

-ところで、この玄関。玄関でありながら、掃き出し窓としての役割もありますよね。外のコンクリート土間は玄関ポーチでありながら、テラスでもある。「玄関とテラスを別にしよう」とは、ならなかったんですか?

谷川:「玄関入ったところが土間で、そこから大きなものを出し入れできる」っていうのが、当初からのコンセプトとしてあったので、必然的にこの形になりました。

ちなみにこの家、樋がありません。

雨の日には屋根から流れ落ちる雨を窓越しに見ることができるという、普通の家にはない面白さも。

-樋がないことで、なにか不都合はありませんでしたか?

お施主様:とくに気になったことはないです。

谷川:玄関前には雨は落ちてこないし、土地が広いので隣の敷地に流れ込む心配もないし。もともとコストダウンのつもりでやったことなんですけど、デザイン的にもよかったと思います。

お施主様:樋があると、やっぱり見え方は違う?

谷川:やっぱり、樋がない方が軒のラインはきれいに見えますね。こういうことを提案しても「いいんじゃない?」って言ってくれるお施主さんだから、できたことでした。

-それだけ信頼されていたんですね。

ひとり暮らしの家といってもワンルームという感じではなく、LDKなどのパブリックなスぺースと寝室・浴室といったプライベートエリアがきっちり分かれています。

このように計画した理由は、土間のあるリビングを“山仲間が集まる場所”と想定していたから。「カフェとかできたらいいな」という思いもあったようです。

-場所は、最初から野坂一択?

お施主様:一択です。毎日、野坂山に登りたかった。野坂以外には考えられないですね。

-毎日登ってらっしゃるんですか?

お施主様:(お子さんの方をチラッと見ながら)今は登ってないですけど。

谷川:完成当時は毎朝登って、山頂でご来光を見てから出勤してましたよね。

-すごい!ほんとに山がお好きなんですね!

谷川: お引渡し後に一度だけ、ご一緒させてもらったことがあるんです。ちょうど夏至の頃だったので、夜中3時集合、ご来光を見て帰ってきたら朝6時で。3日間は筋肉痛で動けませんでした(笑)

-ところで、谷川建設さんとはどのように知り合ったんですか?

お施主様:実は、谷川さんの前に一社、別の会社にもお願いしてたんです。でも、その会社は金額が高すぎて……。

どうしようと思っていたら、友だちが「知っとるとこあるけど、紹介しよか?」って言ってくれて。「うん!紹介して!」って。

-その後はもう、ほかの会社に行こうとは思わなかった?

お施主様:全然思わなかった。「この人は信頼できる」って思ったから。

谷川:恐縮です。

-住み始めて2年半ですか。実際どうですか?住み心地は。

お施主様:最高。

-最高!家のなかでいちばんのお気に入りは?

お施主様:土間まわりの空間ですね。あと、冬でも暖かいところ。夏も暖かかったけど(笑)

谷川:ここの窓、日当たりいいですからね。夏は日除けとかあるといいかも。

-それでは、最後の質問です。谷川さんって、どんな人ですか?

お施主様:うーん……。優しい、けど、優しいの一言では片付けたくない。なんて言ったらいいんだろう。私の語彙力では出てこない。

-谷川さんはいかがですか?

谷川:フランクで壁をつくらずに話してくれる方なので、何でも本音でお話できました。失礼だったかとは思うのですが、途中からは友達みたいになっちゃいましたね。

お施主様:それ!私もそういうことが言いたかった!

知り合いで家を建てたいって人がいたら、必ず「谷川さんに相談して!」って言ってる。「私の家、見に来て!」って。

谷川:うわー。ありがとうございます!

普段、男の人に対しては人見知りが激しくて大変だというよちよち歩きのお嬢ちゃんも、なぜか谷川さんに対しては物怖じせず。絵本を持ってきて、読み聞かせをおねだりするほど。 インタビューの間も始終ごきげんで、最後にはニコニコ笑顔で見送ってくれました。

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