築30数年の平屋のリフォーム。無垢の木目が際立つこの家は、もとはどこにでもあるごく普通の民家でした。
目を惹くのは外観だけではありません。LDKを横切る立派な梁には、平成の家だとは思えない古民家然とした風格が。
-立派な梁ですね。
谷川:そうなんです。せっかく出てきたし、見せようかって。で、梁をあらわしにするなら、床も無垢がいいねってなりました。
-床は何の木ですか?
谷川:パイン(松)です。ご主人に「コストダウンのために自分で塗装してみませんか?」ってご提案しました。
ご主人:そこの車庫で塗りました(笑)
-すごくいい感じです。このLDKはもともと二間だったんですよね?
ご主人:そうです。台所と居間で、ここの壁際にキッチンがあって。
(改修前)
-キッチンは壁付けだったんですね。この家は中古を買われたとか。
ご主人:当時の家主さんが高齢者向けの施設に入ることになって。知り合いから「家、売るらしいよ」と聞いたのがきっかけでした。
-この近くにお住まいだったんですか?
ご主人:すぐそこです(笑)
-すごい、運命的! 玄関まわりがすごく素敵なんですけど、改修前はどんな感じだったんですか?
ご主人:玄関は昔ながらのアルミの引き戸でした。「こんな焼ける?」ってくらい日焼けして、白くなってました。
(改修前)
谷川:正面はガラッと変えたいなってことで、ほかの素材と組み合わせました。
-玄関まわりだけ板張りで、しかも前に突き出してるでしょ? 写真見たとき、ポンっと小屋が置かれているのかと思いました。
ご主人:前の家主さんが一人住まいになるからって、家を直すついでに減築してこうなったみたいです。
(改修後)
約20坪という比較的コンパクトな家ですが、「不自由は感じない」とご夫婦。
なんでも手の届く範囲で生活できる気楽さと、家族みんなが同じ部屋にいる安心感。みんなで一緒にリビングで過ごし、寝るときには一緒に寝室へ移動する生活が、結構気に入っているそうです。
奥様:ちゃちゃ丸(ワンちゃん)も、ずっと一緒にいるし。留守番のときもリビングにいるか、寝室で寝てるか。
-寝室に寝に行くんですか(笑)
奥様:うん(笑)寝るの早いよね。
ご主人:9時には寝てますね。寝るときは必ず寝室。子どもと兄弟みたいに一緒に過ごしてます。
奥様:家が広いと家族バラバラでいることが増えるのかなと思うと、これくらいがちょうどいいですね。
谷川:これからの時代、最後まで同じ家に住むとは限らないですしね。楽しく住んで、不足が出てきたら直したり、住みかえたり。いろんな選択肢があります。大きな家よりも、自分たちに合ったサイズの家に住んでいく。それは新築である必要はないんです。これも住まい方の価値観のひとつです。
“住みかえながら住み継いでゆく”という考え方は、空き家問題に悩む日本の住宅事情におけるひとつのテーマでもあります。
-リフォームってコスト調整が難しいイメージがあるんですが、その辺はどのように工夫されましたか?
谷川:外壁は張り替えるところとそのままのところ、メリハリをつけました。
ご主人:こっちと、そっちと、二面はもとのままです。
谷川:あと、家のなかもLDK以外の2部屋はほぼそのままです。
奥様:畳替えとドアを新しくしただけですね。
谷川:そう。あと、トイレにはちょっと面白い壁紙を貼りました。
-輸入クロスでしたね。どなたのチョイスですか?
奥様:私です。
-こういうダイナミックな柄、お好きなんですか?
奥様:好きですね。
谷川:私は、最初はそんなつもりなくて。たまたまカタログあったから「こんなんもありますよ」って見てもらったら、「これがいい」ってなりました。
-なかなか見ないデザインですよね。
谷川:メーカーさん曰く、テレビのバラエティー番組のセットなんかでたまに見る程度らしいです(笑)トイレは他とテイストを切り離せるから、楽しいですね。
-テイストといえば、最初からこういう古民家カフェ風がコンセプトだったんですか?
谷川:立派な梁が出てきたので、折角ですしこの梁を活かそうかって。テイストはあとからついてきました。
ご主人:わりと、その都度合わせていった感じですね。
-最初にイメージしていたのは、どんな家でしたか?
ご主人:かわいい系が好きだったよね?
奥様:かわいい系?
ご主人:黒っぽい家とかじゃなくて。
-ナチュラルな感じ?
奥様:そう、それです。パパはどっちかっていうと、黒とかモダンな感じがよかったんだよね(笑)
ご主人:そう。外壁も黒にしたかったけど、隣で「白の方がええで。白が合うで」って(笑)
谷川:男だけで決めると男くさくなっちゃうんですが、奥様の意向が入ると、いい具合にやわらかくなりますね。
-でも、外観も無垢を使いつつ破風板はグレーに塗装してあったり。いい感じのナチュラルモダンですよね。
谷川:締めるとこは締めて、バランスが大事ですね。
-あと、この筋交い。
奥様:かわいいから気に入ってます。
谷川:この筋交いがないと構造的に不安がありますし、かといって壁にすると圧迫感が出てしまうので…見せる筋交いにしました。
-こっちの(写真右側)壁は?
清澄社長:これも三尺(90cm)の壁だったんですけど、できるだけ部屋を広く使いたい、でも撤去すると構造的に不安で。半分の長さにして、構造用合板を貼って耐力壁として機能するようにしました。
ご主人:「この壁、抜けない?」って聞いたら「それはダメ!」って一蹴されました(笑)
奥様:谷川さん信用しててよかった。こういうこと、ちゃんと言ってくれるから。
-谷川建設さんとは、奥様のご実家のリフォームが最初だったんですよね。そのときの清澄社長の印象はどうでしたか?
奥様:すごく気さくに話を聞いてくださる方だなと。父とすっかり仲良くなっちゃって(笑)
-このご自宅も迷わず谷川建設さんに?
ご主人:そうですね。
奥様:親身に聞いてくれるから、結構なんでも言っちゃったかも(笑)
-私、何組かインタビューしてますけど、皆さん「言いたいこといえる」って言いますね(笑)
谷川:ありがたいことに、みんな言ってくれますね(笑)
ご主人:でも、いちばん大事だと思います。ぼくも嫁も言いやすいし、うまく間に入って話をまとめてくれるのが、谷川さん。
-では、最後に谷川さんにお伺いします。このリフォームで大変だったこと、記憶に残った出来事などありますか?
谷川:新築なら最初から「こうしましょ」って計画立てられるんですが、リフォームの場合は想定外のことが起きるんですよね。それが逆に面白かったです。
じゃあ、こうすればいいんじゃないかって、何か出てくるたびに相談しながら進めました。
ご主人:一緒につくってるって感じでしたよね。
谷川:あと、難しかったのは玄関ですね。「玄関がすごい公民館っぽい」って言うんで、どんなんかと思ったら「あ、公民館や」って(笑)
(改修前)
ご主人:玄関の公民館っぽさをなくすのが課題でした(笑)
公民館っぽさが気になった玄関も、ナチュラルモダンな今どきの玄関に。新設した土間収納には扉がなく、棚板にはご主人が集めているスニーカーがズラリと並びます。
(改修後)
「これを見せたかったんだよね」と、ニコニコしながら奥様。
素材の魅力をいかした、暖かみのある空間。そこに広がるご家族の笑顔が、とても印象的でした。